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さう云ひながら
さう云ひながら、その男は立ち上つて、応接室の入口に、立てかけてあつた風呂敷包を、卓の上に持つて来た。その長方形な恰好から推して、中が軸物であることが分つてゐた。 「実は、之を閣下に御鑑定していたゞきたいのです。友人に頼まれましたのですが、書画屋などには安心して頼まれませんものですから。是非一つ閣下にお願ひしたいと思うたものですから。」 瑠璃子の父は、素人鑑定家として、堂に入つてゐた。殊に北宗画南宗画に於ては、その道の権威だつた。 「うむ! 品物は何なのだな。」父は余り興味がないやうに云つた。書画を鑑定すると云つたやうな、落着いた気分は、彼の心の何処にも残つてゐなかつたのである。 「夏珪の山水図です。」 「馬鹿な。」父は頭から嘲るやうに云つた。「そんな品物が、君達の手にヒヨコ/\あるものかね。それに、見れば、大幅ぢやないか。まあ黙つて持つて帰つた方がいゝだらう。見なくつても分つてゐるやうなものだ。ハヽヽヽヽヽ。」 父は、丸切り相手にしようとはしなかつた。相手は、父にさう云はれると、恐縮したやうに、頭をかきながら、 「閣下に、さう手厳しく出られると、一言もありません。が、諦めのために見て戴きたいのです。贋物は覚悟の前ですから。持つてゐる当人になると、怪しいと思ひながら、諦められないものですから。ハヽヽヽヽヽヽ。」 女房の妬くほど亭主もてもせず
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NYOUBOU — 女房の妬くほど亭主もてもせず
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